おわりに


「聖書献上」あるいは「献上聖書」が、大方の関心を引きにくいテーマであることは承知している。しかし筆者にはみずからの経験から、このささやかな文章がやがてどこかで、思わぬ分野において、何かのお役に立つであろうと期待する気持ちがある。それが本稿を広く公開する理由である。

筆者は先に関信三研究と森有礼研究を発表した。関信三は筆者の専門分野において重要な人物でありながら、彼に注目した研究はごくわずかであった。森有礼もわが国の初代駐米外交官という重要な史的位置にありながら、そこに注目した研究はこれまでなかったのである。 大方の研究者にとって、それらはなくても困らない、むしろないことにも気づかないテーマであった。 しかしひとたびそれらが掘り起こされると、それに刺激を受けて、これまでになかった研究が生まれはじめた。 この流れは続いていくであろう。そしていつの日か、どの分野においてか、清新な研究が生み出され、周辺の研究構造をも組み替えていく力になるであろうことを筆者は疑わない。

聖書献上についても同じようなことが言えるのではないか。今、この地味なテーマに関心を持つ研究者はいないかもしれない。しかし、やがて大きなテーマになるという予感がある。拙稿が何らかのきっかけになれば幸いである。

関信三研究に道を開いたのは津守真氏(1926-2018)であり、森有礼研究の新しい扉を開いたのは林竹二氏(1906-1985)であった。ともにおよそ50年前に独自の研究を発表された [注11] 


  • [注11] 津守真「関信三の幼稚園紹介」『幼児の教育』第61巻2号 1962
       津守真「関信三の生地を訪うー文明開化と幼稚園紹介」『幼児の教育』第67巻8号 1968

                 林竹二「森有礼研究第一 森駐米代理公使の辞任」『東北大学教育学部研究年報』第15集 1967
       林竹二「森有礼研究第二 森有礼とキリスト教」『東北大学教育学部研究年報』第16集 1968


筆者の関信三研究と森有礼研究はおふたりの研究に触発されて生まれたものである。研究は受け継がれる。



<付記>

筆者は本小文を発表する手立てを持たない。仮に手段があったとしても、紙媒体での発表では読者が限定されてしまう。そこでウエブ公開という方法を用いることになった。初めての試みであり、心もとないことこの上ないが、これが筆者にとっておそらく最後の原稿になると思われるので、こうした形での公表を決意した次第である。多々ある欠けをお許しいただければ幸いである。

なお、都合上ホームページという形をとっているが、現在のところ、多少の校正のほかには内容についての更新の予定はない。そのことをあらかじめお伝えしておきたい。


みなさま、拙稿にお目通しくださり、ありがとうございました。

             2019年12月6日   国  吉  栄



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<追記> 
  2024年2月12日付で「関信三、森有礼、献上聖書、研究その後」と題する小文をweb上に公開した。
  関心のある方は参照されたい。(2024年3月9日記)


         

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